囚われジョーカー【完】
柔和な男性の方だって、世間一般で言うなら格好いいと思うし。二人揃って店内の視線を集めている。
スーツを着た男性二人を席に案内する。椅子に腰掛けた怖い人は、怠惰そうにネクタイを緩めスーツのポケットから四角い箱を取り出す。
その箱から、白い棒を一本抜き取りくわえる。
その動作があまりにも鮮麗で妖艶だから、思わず見とれてしまったが。はっと我に返り直ぐに声をかける。
「……あの、」
「…。」
「ここ、禁煙なんです。」
「…あー、すんません。」
そう言った私に向けられた瞳は、鋭くも身体の芯をくすぐるような甘さが孕んでいる気がして。小さく頭を下げると踵を返し足早にその場を離れた。
やっぱり、怖い人だ―――。
傍から離れても、店内にいるわけだし二人の会話は絶対的に聞こえてくるわけで。