囚われジョーカー【完】
「和風パスタ、ですか?」
店に入り、腰に手を当てて店内を見回す明日香さんに問いかければ。にっこりと微笑んで頷きが返ってくる。
充満する美味しそうな香りに私の無くなっていた食欲がそそられる。単純だ。
と。
「あ、居た居た。陵ちゃーん!」
「…あれ、明日香?」
隣に立つ明日香さんが誰かを見つけたらしく、片手を上げながら駆け寄っていく後ろ姿を目で追った。
親しげに会話を交わず陵ちゃん゙と呼ばれた男性は、服装的にシェフ。優しげな笑顔が引き立つ綺麗な顔立ちをしていると思考の片端で思った。
「菫ちゃん、清水ちゃん。」
ぼーっと立っているしかなかった私と清水くんを笑顔で手招く明日香さん。早歩きで傍に寄れば、両肩を引かれ引き寄せられた。
「菫ちゃん!可愛いでしょっ。で、そっちのが清水ちゃん。まあまあイケメンでしょ。」