囚われジョーカー【完】



知りたいと思ってた。けれど゙三浦゙としか名乗らないのは私との線引きだと思ったから聞かなかった。


愛しい人の名は、三浦春海。空いていた、これからも埋まることはないんだろうと思っていた距離が近付いていく。




「まあ、次期社長ってやつが決まったのも今日だからなー。春海が曖昧だったのは許してやってね。」

「…。」

「後、もう分かってるかもだけど俺と春海と麻乃は同じ会社。付き合いも長い。」




―――そこまで話して言葉を区切ると、カズヤさんはゆったりとした動きでソファーから腰を上げる。


その意図を察したように麻乃さんも立ち上がり、カズヤさんの隣に寄り添う。



「じゃあ、もっかい直談判しに行ってくるわー。」

「…ああ。」



ひらひらと指先だけを振って歩き出したカズヤさんに次いで、麻乃さんは洗練された動作でお辞儀をした。




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