囚われジョーカー【完】



「私だって、春海以外いらない。」

「…当然。俺の檻は菫だから。」



―――お互い、囚われ合うのも幸せじゃない?



そう囁き悪戯に微笑んだ春海が愛しくて愛しくて、胸がきゅうっと締め付けられた。



御両親は、ボーイさんに料理を注文していてこちらを見ていない。


……今しかない、こんな大胆なことをするチャンスは。

だって普段から私は積極的なタイプじゃないから、今しかこんな恥ずかしいこと自分から出来ない。




くいっと春海のネクタイを引っ張って、不意打ちに唇を下から重ねた。


酷く驚いたように目を丸くして私を見下ろす春海に、小さく笑って。




「そういう幸せの方が、飽きません。」

「…言うじゃん。」


ふ、と口角を引き上げいつも通りの笑みを浮かべた春海。






幸せってやつは案外

平凡すぎるのは物足りない


ちょっとくらい

泣いて、悩んで、囚われ合って


普通じゃない方が

私達には合っているのだろう。



さあ、


―――――2人の生活を、始めていこうか。




< 379 / 393 >

この作品をシェア

pagetop