。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
「えっ?」
トラウマ?
なにそれ…
「…俺、前に彼女いたんだ。そいつは、奈央
にそっくりだった」
「は…?」
坂下クンも驚いてるみたい。
あたしは…状況が理解できてない。
「…すげぇフラれ方したんだ。あいつが好き
だったのは、俺の声だったんだよ」
「えっ?」
余計わかんない。
光輝クンの声が好きってことは、光輝クンが
好きってことなんじゃ…
「…俺自体には興味がないって話だよ。俺は
その時、自分の存在を否定された」
「………」
あり得ない。
あたしは、そんなことする人許せない。
「…だから、奈央が怖いんだ。好きだけど…
お前が好きになったのも、俺の声だから」
「違う!!あたしは、光輝クンの優しい声が好
きなの!!」
「…っ…やっぱり、俺の声だろ」
「違う!!」
「お前が惚れてるのは、俺の声で俺じゃない
んだよ!!俺の声の優しいキャラなんだろ!?現
実を見ろ!!俺は、お前の思ってるような人間
じゃねぇんだよ!!」
「…それでも、あたしは、光輝クンの声が表
す優しい性格が好きになったんだよ。光輝ク
ンは、口はきついかもしれないけど、心は優
しいから。あたしは好きだよ。光輝クンの声
も、少し意地悪な性格も、全部が…」
「……奈央」
あたしは走って屋上を出ていく。
坂下クンが追いかけてきていた。
…最後に聞こえた。