。*雨色恋愛【短編集】*。(完)

「えっ?」

トラウマ?

なにそれ…

「…俺、前に彼女いたんだ。そいつは、奈央

にそっくりだった」

「は…?」

坂下クンも驚いてるみたい。

あたしは…状況が理解できてない。

「…すげぇフラれ方したんだ。あいつが好き

だったのは、俺の声だったんだよ」

「えっ?」

余計わかんない。

光輝クンの声が好きってことは、光輝クンが

好きってことなんじゃ…

「…俺自体には興味がないって話だよ。俺は

その時、自分の存在を否定された」

「………」

あり得ない。

あたしは、そんなことする人許せない。

「…だから、奈央が怖いんだ。好きだけど…

お前が好きになったのも、俺の声だから」

「違う!!あたしは、光輝クンの優しい声が好

きなの!!」

「…っ…やっぱり、俺の声だろ」

「違う!!」

「お前が惚れてるのは、俺の声で俺じゃない

んだよ!!俺の声の優しいキャラなんだろ!?現

実を見ろ!!俺は、お前の思ってるような人間

じゃねぇんだよ!!」

「…それでも、あたしは、光輝クンの声が表

す優しい性格が好きになったんだよ。光輝ク

ンは、口はきついかもしれないけど、心は優

しいから。あたしは好きだよ。光輝クンの声

も、少し意地悪な性格も、全部が…」

「……奈央」

あたしは走って屋上を出ていく。

坂下クンが追いかけてきていた。

…最後に聞こえた。
< 105 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop