。*雨色恋愛【短編集】*。(完)
…本当に、俺は狂ってる。

なぜだかわからないけど、俺は転校した。

…奈央のいる学校に。

ついでに、仕事を理由に、クラスまで一緒に

してもらい、席まで隣になった。

…俺は、なにやってんだ。

最近、本当に自分がわからない。

俺はどうしちゃったんだ。

「光輝!!」

奈央に教えてもらった、今の友達、坂下舜。

こいつはめっちゃカッコイイ。

女子が、舜のことを見つめてるのを、よく見

かけるんだ。

「なんだよ、舜」

「もうすぐ、夕暮の声優、初仕事だろ?」

「…まぁな」

夕暮…と、舜が言う度に、俺はおかしくなっ

てしまうんだ。

「光輝さ、夕暮のこと見ててやって」

「は?なんで?」

なんで俺が、アイツの面倒なんか…

「夕暮、天然だから。バカなことやっちゃう

かもしんねぇし」

「アイツはいつだって、バカだろ」

「いいんだよ。学校でバカやってる分には。

でもアイツが外でなんかやるとな…」

「アイツ、天然だもんな」

「そ。しかも、あの窪野とかいう奴、とくに

怪しいから。アイツ、鈍感だし」

そう。

ここでもアイツは、天然っぷりを発揮。

アイツは、まわりの好意に気づかない。

「でも、俺はアイツの面倒は見ねぇよ?ダル

いし。てか、付き合ってらんねぇ」

…俺が狂うし。

「…まぁ、見守ってやれよ」

「…お前はすげぇよ」

「あ?なんで?」

だって、お前はまっすぐに奈央のことを好き

だから。

「…なんでもねぇよ」

それにしても、俺はおかしい。

普通の俺なら、舜の態度を見て、すごいなん

て思わない。

学校なんか、なにを思っても変えない。

それもこれも、すべてあの、ド素人の天然の

奈央のせいだ。

…なんなんだよ、アイツ。

ただの天然だよな…?
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