あやとり

何でもないことなのかもしれないけれど、直哉に電話をして留守電にもならなかったことが、直哉の声を聞くことで自分を慰めようとしていたこの時を、さらに孤独へと落としていった。

携帯電話を閉じて、ぺたんとその場に座り込む。

携帯電話がなければ、直哉との繋がりが見えない。

電波がなければ、直哉の存在を感じることが出来ない。

「わたしってほんとう、自分勝手だ」

今、直哉に連絡を取る事ができないということだけで、いきなり目隠しをされて寂しい場所に置き去りにされた気がした。

病室のベッドの上、真っ暗な部屋の中、目を覚ましてしまって、ひとり静かな闇に飲み込まれて自分が消えてしまいそうになったあの頃と、よく似た孤独感に飲み込まれそうだった。

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