あやとり
当時大学四年生だった直哉はいつも笑顔で、年下の私にも丁寧な言葉遣いをしてくれていた。
とても落ち着いていて、大人の男の人だった。
あまりにも崩れないその笑顔が、まるっきり私を子ども扱いしているように感じられて、しばしば彼を困らせるようなことをしてみた。
「まったく、かなわないなぁ」
直哉が苦笑しながらそう呟くのを見るのがくすぐったくて好きだった。
長身で優しげだけれど、男っぽいその容姿にも会うたびに惹かれていった。
その反面、彼が本当に私なんかに興味を持ってくれているのか自信が持てなくて、直哉に対しての想いも曖昧なままになる。
それでも時にはアルバイトが終わる時間に彼が待っていてくれて、帰りに家まで送ってもらったりするようになっていった。
お互いを名前で呼び合うようにもなって、直哉が就職してからもこうやって会っている。