あやとり


甲斐君の顔が浮かぶ。

こんなこと東京にいる彼に知らせていいのだろうか。

でも、もし優ちゃんの身になにかあったら……そんなこと絶対ない!優ちゃんは絶対大丈夫。

〈でも、俺、蚊帳の外にはなりたくないから〉

彼の台詞が蘇ってくる。

やっぱり知らせなきゃ。

知らせなきゃいけない。

私は病院の外へ出て、携帯電話を手にした。

電話の呼び出し音が五回したあと、彼が電話に出た。

「もしもし」

「か、甲斐君」

「よう」

「た、大変なの、優ちゃんが……」

説明しようとすると、優ちゃんが倒れていた光景が思い出されて、背筋がぞっとしてしまう。

「なにか、あったのか?」

一度深呼吸をして、呼吸を整える。

私が焦ってはいけないんだ。

状況が分からない側が、余計不安になるような説明をしちゃいけないんだ。


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