あやとり

「そして、君のお母さんはその時二十五歳だったと、言うのだろう?お父さんも同じことをおっしゃったよ」

そうか、そういうご両親の姿を見ながら育ってきたから、甲斐君は優ちゃんとのことに、なんの迷いも引け目を感じないでいるのだろうと思えた。

父の顔から笑みが零れた。

それを見た瞬間、優ちゃんの顔がぱぁっと明るくなった。

「まったく、参ったな」

父は本当に参ったという顔で笑っている。

「とにかく、君には一人前の男になってもらわなきゃ困る。うちの自慢の娘に手を出したんだからな」

「違うわ、お父さん」

優ちゃんが茹蛸みたいになっている。

でも、にっと笑って見せて、両親を前に驚く発言をした。

「わたしが高校生に手を出したのよ」

父も母も目を丸くしていた。

それがなんだか微笑ましく感じるシーンだった。

ずっと優等生だった優ちゃんが、両親の反応を見て笑っている。


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