あやとり


両親は、優ちゃんの話をほとんどしなくなっていた。

そしてその分、両親の視線は私に向けられた。

やたらと干渉してくるようになり、嬉しいような、迷惑のような複雑なものだった。

そのことを私が自覚したのは、今まで一度もバイト先に顔を出したことのなかった母が、突然店にやってきたときだ。

当初、母はアルバイトには反対していたのだが、優ちゃんの口添えでアルバイトが出来ることになったという経緯があった。

優ちゃんの婚約破棄のことで機嫌を損ね、辞めさせられるのではないかと冷や冷やしていた。

だから私は、母の姿を見つけた時、焦ってしまって事務所に隠れてしまった。

事情を知っていた店長が、店内に入ってきた母に挨拶をし、私の働き振りを褒めてくれていた。

隠れていちゃ逆にまずいと判断し、レジ前に出ると、母は頬を紅潮させながら「あなたも大人になったわね」と、満面の笑みでペットボトルのお茶を買って帰っていった。


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