あやとり

小児ぜんそくだった私は、入院をするたびに病院の白い壁を見ながら、家で普通の生活をしている姉の姿を羨ましく思い浮かべていた。

ひゅうひゅうと呼吸音がしてしまう。

熱が出る。

乾いた咳が止まらなくなって、医師が入院を告げると、母がため息をひとつ漏らす。

そのため息の意味が分からなくて、母の顔色を窺ってしまう。

母が帰っていった後、見つめ続けた白い壁はいつも無言で、私はただ一人の時間と向き合うしかない。

だんだんと自分はいらない子供なのかもしれないと思い始めてしまうのだ。

卑屈な精神はこういう環境のなかで徐々に作り上げられていったのだ。

それはきっと、家族の誰にも気付いてはもらえない。


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