あやとり


千春と二人で優ちゃんのアパートを出た帰り道、拗ねたように千春が歩いているのをぼんやりと眺めて少し後ろを歩いた。

今日、自分が優ちゃんに言った言葉の数々が蘇ってくる。

いったい私は優ちゃんにどんな反応を望んでいるのだろう。

「なんかさ、雅のお姉さん、甲斐君と付き合っているとしても、いないとしても、ちょっとずるいよね」

「ずるい?」

「だってさ、甲斐君があの部屋に遊びに来ていることは事実じゃん。あんな綺麗な人だったらさ、高校生じゃなくっても、男の人ならやっぱり、ね。それ、きっと自分でもわかっていて、部屋にあげているんでしょう。それなのに『付き合ってない』とか言っちゃうのって、ずるいと思う」


甲斐君を好きな千春にとって、優ちゃんはそう映るんだ……。


「なんかやっぱりずるいよ。ただでさえ、あのルックスがずるい」

なんだか、駄々っ子みたいな台詞だなぁ。

自分の中で渦巻いている言葉でも、他人が言うとそう思えた。

「ずるい、かぁ」

そんなこと、今更千春に言われなくても、私がいちばんよく知っているよ。

今日はこの前みたいな月が見えない。

ほんとうは月が出ているのかもしれないけれど、今の私の心では、月を探し出せないだけなのかも。


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