風の音色
高い壁の町
―夕方―

「…や…やっと着いた」

朝の元気は何処へやら
疲れ切った陸斗がいた

「やっぱ、かなり壁が高いね」

海斗は全く疲れの色が見られない
陸斗がゼーハーと下を見ているのに対し、海斗は高くそびえ立つ壁を見上げる

「さ、早く入ろ
宿で寝たいんでしょ?」
「宿!!よっしゃー
宿が俺を待ってるぜ!!」
「いや、待ってないと思う」

海斗の一言は、今の陸斗には聞こえない
早速手近にあった扉を開けてくぐる

「…あれ?誰もいねぇ?」

部屋に入ると、そこには長方形のテーブルがあるだけの部屋だった

(…おかしいなぁ…
こういう場所があるのに、入国審査みたいなことをする人がいないなんて…)

海斗は疑問に思いながら。部屋を歩き回る
しかし、何も無かった

「海斗~~、誰もいねぇんじゃしゃーねぇ~よ
早くこのドアの向こう行こうぜ~」
「…あぁ…そうだな(…何か変なんだ…一体何が…?)」

何か引っかかりを感じながら、海斗は陸斗のもとへ行く

ギィ…

重々しい音と共にドアが開かれた

「とーちゃー…く…?」
「・・・」

扉の向こうは…人だかりでした…

「俺達旅してんだけど、この街って泊まるとこある??」

初対面でも敬語無しの陸斗が先に口を開く

(…何か変だ…
この雰囲気…僕達を歓迎している…ってわけでは無いみたいだし…)

不穏な空気が漂う中、陸斗は首を傾げる
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