残存リズム

紫音くんは、私の手に何かを握らせた。

緩やかに微笑む紫音くんの顔をうかがいながら、ゆっくりと掌を開く。


紫音くんの、ピック。


「それ、将来価値出るから!」


そう言っていたずらっぽく笑う紫音くん。


「凜は俺のファン第一号だからな!!」


紫音くんが、あの素敵な歌を奏でたピック。


私もいつか、私の音を奏でられるかな?
少し強くなれる気がして、私はピックを握りしめた。


紫音くんが続ける。


「なぁ、凜。俺は必ず有名になって、たくさんの人に俺の声を届けるよ。」


紫音くんと目を合わし、微笑む。


「だから凜も、次に会う時までに夢を見付けてて欲しいんだ!!」


私は、ゆっくりと、だけど強く頷いた。
< 34 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop