フルーツ ドロップス
 「位置について……」
やる気がないな。
出来れば今日は走りたくないんだけど。
 「よーい……」
その声に腰を上げて、走る体制にかまえた。
 「ドンッ!!」
その声と同時に走り始めた。
風が前から向かってきて、その風が生ぬるいから気持ち悪い。
速く終わらせるために走って、ゴールした。

走り終わり、森川君のところに向かって、
 「何秒だった。」
と聞くと、彼はギッと睨みながら、
 「……6.7……。」
とそっぽを向いて言った。
さっきの彼のタイムは7.0
俺は6.7。
…タイムを越してしまったようだ。
 「速いんだな、お前。陸上でもやってたのか?」
 「いや、何もやってない。帰宅部だったから。」
 「なにやってこんなに速くなったんだよ。」
……何も、やってない。のに速い。
彼はそれがどうも気になっているようだった。

その後も、100mやった。
なんだかんだ言って、森川君は楽しそうだった。

___キーンコーンカーンコーン……
授業が終わり、俺はグーッと伸びをした。
横に立っている森川君は、
 「親父みてぇだな。」
と、笑っていた。
……おやじ、か。
 「そんなに年老いて見えるかな。」
そう聞いた瞬間だった。
 「森川君……?」
彼は、苦しそうに顔を歪めて、
___ドサッ…
倒れた。
 
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