靴磨き
「話せば、長くなるんですよね。……あ、終わりました」

 彼は手のひらに靴を揃えて差し出すと、片方ずつ、私の足に履かせた。

「うん、いいね。いいよ」

 靴ばかりではなく、自分自身まで生まれ変わったような清々しい気分になった。

「ありがとうございます」

「……いや」

「どうかしましたか?」

「うん……、ありがとう」


 帰り道すがら、軽いステップに、鼻歌が出た。

 信じ難い話である。



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