桜花~君が為に~
「どうか、したのか?」
「え、あ…何でもありません」

どうやらいつの間にか笑っていたらしい。
気がつけば不思議そうな顔をした斎藤さんがすぐ目の前にいた。

自分でも知らないうちに笑っていたことが恥ずかしくなり
すっかり体温が上がってしまった頬を両手で押さえた。

問いかけてきた斎藤さんに
ぶんぶんと首を横に振りながら言葉を返す。
それを見た彼はそうか、と言って再び夕飯の支度に取り掛かった。

「あ、あと私沖田さんの看病をしてからご飯いただくので
ここに置いといてください」


出来上がって粥を味見しながらそう言葉を紡ぐ。

粥はわれながら上手い出来だった。

よし、完璧と心の中で呟き

「それでは、失礼します」

ようやく出来上がった粥を手に
私は斎藤さんへと礼をする。
「あぁ」と短く返事をした斎藤さん
斎藤さんらしすぎるその言葉に少し笑みがこぼれた。
そして出来上がった粥を手に
私は調理場を後にした。
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