桜花~君が為に~
「ごちそうさまでした」

しばらくして、粥を食べ終えた沖田さんは
手を合わせてそういった。
「お粗末さまです」といいながら
私はゆっくりと沖田さんを再び布団に寝かす。
それから、空になった鍋と碗を持って立ち上がった。

「それじゃあ、私はこれを治してから
替えの包帯を持ってきますね」
「うん。ありがとう」

微笑んだ彼に答えるように
私も笑顔を見せた。
それから、部屋を後にした。













「ゲホッゲホッ」

悠輝が出て行った部屋の中
沖田は悠輝の足音が遠ざかったのを確認して
体を二つに折り曲げ、激しく咳き込みだす。

「――――…っ」

しばらくしてようやく咳がやみ
沖田は、折り曲げていた体を伸ばした。

手の甲を天井に掲げて
自分の手のひらを見る。





それは少し
朱に染まっていた。

< 26 / 152 >

この作品をシェア

pagetop