桜花~君が為に~
「それじゃあ、大人しくしといてくださいね」
「はいはい、わかってるよ」

包帯を替え終えた悠輝は立ち上がり
部屋を出て行くさいに沖田にそう言った。
そんな彼女の言葉に沖田はへらへらと笑って答える。


「絶対、ですよ!!!」

最後にもう一度釘をさして
悠輝は部屋を後にした。

思いのほか遅くなってしまった。
きっと、彼に付き合って月を見てしまったせいだ。

空に浮かぶ月が
彼とかさなって、目が離せなかった。
綺麗なのに、何処か儚く脆い

そんな彼の姿と

「土方さん、怒ってたらどうしよう…」

鬼の副長という二つ名のとおり
彼はとても厳しかった。
悠輝も、沖田も幾度なく怒られ
その後の沖田の愚痴を悠輝は苦笑いで聞く。

それが、いつもの風景だ。
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