桜花~君が為に~


あぁ
神様、許してください
私は…この人のことが……


沖田の胸に抱かれながら
悠輝はようやく自分の中にあった気持ちを認めた。
ずっとずっと憎しみで忘れようとしていた想いを

優しく背中を撫でる彼の手
自分を包み込んでいる彼の腕

その全てが愛しいと…


「すみません。沖田さん…
もう、大丈夫です」

しばらくしてそう言うと
ゆっくりと体が離された。
まだ頬を伝う涙を沖田が親指で拭う

「お茶。もって来てもらってもいいかな」
「―――え?」

思ってもいなかった言葉に思わず聞き返すが
彼の表情を見て悠輝は理解した。

「あ、はい。わかりました」
「有難う」

笑顔の沖田につられ悠輝も笑顔になる。
それから、立ち上がって調理場へと歩みを進めた。



―――…沖田のこの表情を悠輝はよく知っていた。
一人にしてほしい。そんな彼からの合図。
沖田はきっと悠輝がそのことに気づいていることを知らない
無意識に繰り返されるその行為を
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