桜花~君が為に~
そんな三人を土方・沖田・悠輝は真剣な表情で見守っていた


ようやく呼吸が落ち着き
三人を代表して藤堂が口を開いた

「山南さんが……脱走した」
「なっ」
「えっ!?」
「……」

その言葉に三者三様の反応を見せる
土方は驚きで目を見開き
悠輝は信じられないという顔で藤堂を見つめ
沖田は無言で目を閉じていた

しかし、土方はすぐさまいつもの厳しい表情へと戻す

「今すぐそれを幹部だけに知らせろ
他の隊士には悟られるな、特に伊藤一派にはな」

低い声で三人にそう命令すると
三人は頷いて今度は静かにこの場を後にした

三人が去った後
重い空気が場に漂う



―――…私は、ずっと…死ぬ理由を探していました。
この手で、芹沢を殺してからずっと…


悠輝は胸のうちであの時
山南が言っていた言葉を思い出した

なんとなく嫌な予感がした
今を逃してしまえばもう、彼に出会えないのではないかと…

「土方さん。俺に山南さんを探させてください」

意を決して
まっすぐ土方を見据えて言葉を発する
その言葉に土方は再び眉間の皺を濃くした
にらみつけるようにして悠輝を見つめる
それでも悠輝はひるまなかった
ただまっすぐに彼を見つめ言葉を続ける
< 88 / 152 >

この作品をシェア

pagetop