桜花~君が為に~

「伝、え…なければ、なら。い…が、ありま…す」

荒くなった息の所為で途切れ途切れになる言葉
ひゅーひゅー音が鳴る唇で山南は声を振り絞った

「話なら後でできます!!!
お願いですから、諦めないでください!!!
約束したじゃないですか!!!!!」

瞳から大粒の涙を零しながら悠輝は叫んだ
そんな彼女を見て山南は力なく微笑むと
上手く動かない右手をゆっくりと動かし
そっと、悠輝の頬を伝う涙を拭ってやる

「…君の。婚約、者の…くど。烈…は
生きて…い。す」
「え?」
「約束を…守れね。て…すみ、せ……ん」

先ほどの言葉で呆然とする
悠輝の頬を一度だけ優しく撫で、その手は力なく地に落ちた

「山……南…さ、ん?」

恐る恐る彼の名を呼ぶが返事はない

「やだ!!!山南さんっ!!やです!!起きてください!!!」

そう、叫んで何度も何度も山南の体を揺らす
しかし、彼が再び目を開けることはなかった

「嫌だ…やだ…山南さん
約束、したじゃないですか…
それに、さっきの言葉もちゃんと、説明してくださいよ」

ぽたぽたと悠輝から零れ落ちた涙が山南の顔にかかる血を洗い流す

「もう…静かに、寝かせてあげよう」

今まで黙っていた沖田が口を開いた
その言葉に悠輝はようやく現実を受け止めた
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