星の夢
 夜の学校は暗く沈んでいた。目に映るものはすべて夢か幻のようにほの暗い階段を携帯の明かりのみを頼りにして下っていく。

「屋上って下るもんなのか」

 深く重なり合い先も見えずに沈んでゆく螺旋に中山は不安を覚えていた。答える人も無く黙々と階段を下っている。カツン、カツン……二つの足音が響く、どれくらい歩いたのか、とても長いこと歩いているような気がした。いや、実際はそうでもないのか、そんな考えが頭の中を駆け巡り始めたとき、急に佐藤が足を止めた。

『屋上』

 落書きのような文字で書かれたルームプレートが一枚張り付けられている。

「あった……」

まるでめったに見つからないものを見つけた時のように佐藤が呟いた。中山はその事に驚きが隠せない。屋上は此処にあったのだ。佐藤はドアノブに手をかけると一気に開いた。

「うわっ」

息もできないほどの強い風の塊が淡く光を発しながら螺旋状の階段を吹き抜けた。
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop