空耳此方-ソラミミコナタ-
「僕は鹿沢克己(かざわ かつみ)。今日この花守荘に泊まったのも何かの縁だ。よろしくね」

愛想よく三人と順々に握手する。


短く切った髪はすっかり色素を失って艶やかに白く輝いている。

そのすぐ下には線が左右それぞれ四本――ではなく、眉毛と開いてるのか閉じているのかよく分からない細い目。

その目をにこやかに下げる彼は大体六十代ほどの男性だ。


「で、何をそんな熱心に?」


三人はチラリと目配せを交わす。
恵は体の向きを克己に正した。

「実はですね――」


透の件は避けて、偶然見つけたような風を装って暗号のことを話した。


ちょっと見せてという克己にメモを渡す。


「どれどれ……ん?これは……!」


不意に克己の細い目が止まる。

「何かわかったんスか!?」

「いや…何とも言い難いけど……実物のところに連れて行ってもらえるかい?」


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