空耳此方-ソラミミコナタ-
透は克己に身体を乗り出した。
おいおい、おじいちゃん力強えよ!
炯斗は慌てて力を入れ直した。


「今更何だってんだ!! 玲子を殺したのはお前だろうが!」

「―!!」


克己は俯く顔を更に背けた。
透は炯斗の腕を凪ぎ払い、克己の胸ぐらを掴む。

「おじいちゃん!!」

「おっさん!」


同時に叫んだ恵・炯斗を一瞥し、もう殴りはせんと呟いた。

眉間に深く溝を刻み、克己の顔を無理やり上げる。

「いいか?もう二度とここには近寄るな!!……わかったら出てけ。出ていけ!!」

二言目は三人にも向けられていた。

炯斗と言乃が克己を抱え上げ出口へ向かった。

恵は一人、拳を握り締める透を見つめていた。

「……おじいちゃん…?」

「恵、お前も行きなさい」


少しの間そのままでいたが、透に背を向け洞窟を後にした。


斜陽の光が奥の暗号までもを照らしていた。
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