空耳此方-ソラミミコナタ-


『拝啓

お元気ですか?――なんて聞いてもいいのでしょうか?

僕たちが別れてから何年が経ったでしょう。
その空白の間に貴女はどこにもいなくなってしまいましたが。
本当に久しぶりです。


いえ、玲子姉さんにしてみたら、僕の名前などいくらか見かけることはあったかもしれません。
僕の望まぬうちに、名前だけは売れていたようだから。


こんなことをだらだらと御免なさい。
何を言っていいか困るから手紙にしたはずなのに、これじゃ何も変わりもしない。



姉さん、僕は貴女のことが好きでした。
ずっと、昔から変わらずにずっと。
僕たちがバラバラになってからだって、ずっと思い続けていました。

しかし、それと同時に僕は、貴女から逃げ続けていました。
それは、十五年前の事件からさらに顕著になりました。

それでも、貴女への思いは変わったことがありません。

僕たち三人が、初めてこの島に来たあの時から――――。




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