何度忘れようとしても
やがてビルのエントランスが見えてきた。
自動ドアに人の波が吸い込まれるように皆入っていく。
私もそのあとについていった。

たくさんの会社が入っているこの超高層ビルの16階に、私の通う化粧品会社はある。
私が地方のオフィスからこのオフィスに異動して早4年が経っていた。

会社が用意した1LDKのマンションでの快適な一人暮らし。

今朝のような寂しさが時々きゅうに襲ってくることもあったけれど、ハードワークは皮肉にも、そんな気持ちの火消し役になっていた。
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