ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


「咲々乃!ここにいたんだー捜したのに」


いつの間にか平坂はすぐ側まで来ていた。

わかりやすく夏村の肩に力が籠る。

…んな肩肘張るなって、俺が言えた義理じゃないけどな。


「おー平坂、わざわざ悪かったな」

「ああ、それはいいんだけどさ、白波さん帰っちゃったよ?」

「………は!?」

「まだ間に合うとは思うけど…」

「ばっ、それ早く言えよお前ー!!」

「え、白波さんが好きだったのあんた!?」

「うっ…め、面倒だから今その話持ち出すな!」

「ちょ、まっ」

「あー平坂!悪いんだけどさ、夏村と一緒に教室で待っててくれねぇ?」

「うん、おれは良いけど…夏村さん、時間大丈夫?」

「だ、だい、大丈夫!!」


夏村が噛みながら返事をしたのを確認して、俺は走り出した。


「じゃー咲々乃、頑張ってねー!」

「…っ、あんたこそ逃げないで頑張りなさいよっ!!」


平坂と夏村の声援を、背中に受けながら。
< 52 / 97 >

この作品をシェア

pagetop