憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


『大変申し訳ございませんでした尚様事件』が起こった日から、一週間が過ぎた。

事件翌日、無事に資料を誠東大学本部へと提出し、次回企画されるイベントもスケジュール通りに進んでいる。
あの一夜を境に、より一層尚への愛を深めた千秋と、そんな千秋の背を未だ目で追ってしまうあたしで、自然と三人一緒にいることが多くなった。

親しい友人をつくろうとしなかった尚も、あからさまに鬱陶しそうな顔をしつつ、なんだかんだ千秋の前では素の表情を覗かせるようになった気がする。

QSのホームで、残りの仕事を終えたあたしと尚は、本館へと繋がる渡り廊下をのんびりと歩く。
渡り廊下の窓から空を見上げれば、既に濃紺と橙のグラデーションのカーテンが引かれ、ちらちらと弱い星の光が瞬いていた。

時刻は、夕方の18時を少し過ぎている。
全ての講義が終了している別館に人は疎らで、なんだか怖いくらいに静かだ。
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