憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

黒曜石のような瞳を、真っ直ぐに純子たちに向けた。


「君に売られた喧嘩は、全部買ったから、そのつもりでね」


そう言って、尚は忘れ物だと言った鍵をくるくるとまわして、そっと掌に握りこんだ。

「ばいばい、椎名さん」

無表情のまま彼女達に背を向けて、そしてゆっくりと扉が閉められた。
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