憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「さっき、ホームに不審な男がいたんです」

「不審な男?部屋の中に?」

「はい」

あたしは、そいつの顔を思い出してギュッと握り締める。あんな屈辱的な扱いを見知らぬ男にされるなんて人生で初めての経験。ずりさがるサングラスを押し上げながら、あたしは先輩に訴えた。

「昼間、行ったら鍵、開いてたんですよ」

所属メンバー一人一人に配られる合鍵。
まさか、あの無礼な男はQSの新人なのだろうか。

だとしたら、断固阻止!
固い決意を胸に秘めながら、ずずっと熱い味噌汁をすする。湯気でサングラスが曇るのが非情に鬱陶しい。先輩があたしの顔を怪訝そうに見つめているのに気がついた。

「……なんですか?」

「いや……、サングラス邪魔じゃないのかと……」

「お構いなく」

こんな、泣き腫らしたドブスな顔を、先輩に晒すわけにはいかないのです。

「……その男、もしかしたら岡崎尚かもしれないな」

「オカザキヒサシ?一年生ですか?」

「いや、真知や千秋と同じ二年だ」

なるほど、あの無礼者は同じ学年だったわけか。

「もしかして、入るんですか?委員会……」

「いや、既に入ってる」

「でええ!?」

驚きのあまりにあげた奇声に、先輩は普段は余り表情の変わらないそのお顔を驚きの色に染めてあたしを見つめた。
ああ、もう……今日は厄日!
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