憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「俺、好きなヤツできた」

「そっか、おめでとう。初恋じゃん」

「ああ……サンキュな」


やばい、泣きそうだ。
酔わなきゃリアルにやっていられないと思って、あたしはもう一本、今度はビールを開けた。

「おい、飲みすぎだろ、明日一緒に一限なんだからな!いい加減にしとけって」

「おだまり、千秋!」

「……ったくお前ってヤツは」

あたしは、ゆっくりと千秋に向かい合ってアグラをかいた。

「で、誰が好きなのよ」

「……椎名純子」

知ってますけどね。
この流れは知らない振りをしないといけない。昨晩大泣きして、今日は一日中サングラスをかけた怪しい女だったなんて口が裂けても言えない。

「純子かぁ……、高嶺の花だわね」

「だよなー」

椎名純子。
昨年の誠東学園大学ミスコンで優勝した女。成績優秀な上に非情に女の子らしい性格で、更には椎名財閥のお嬢様だ。

まさしく、非の打ち所がない。
そして、あたしと被っているところが一つも見つからない。
< 27 / 533 >

この作品をシェア

pagetop