憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

二人の背中を見送る。

水を打ったように静まり返った部屋に、小さな気まずさを感じる。
得体の知れない人間と二人きりで残される恐怖。

恐る恐る、後ろを振り返る。

「ひいっ」

思わず声を上げてしまった。
そこにはあの、にこやかな顔で握手を求める岡崎尚は存在しなかった。笑みは一瞬にして消え去り、どこか不機嫌そうに眉を寄せている。

「うるさい女。香水臭いし」

ボソリとそう呟いて、どかっと委員長専用の皮椅子に倒れ込む。

「真知、珈琲でも淹れてくれない」

いきなり呼び捨て!?
しゅぼ、とジッポで口に咥えた煙草に火をつけながらこちらを見もせずにそう言いやがりました。

「だ……誰!!あんた誰!!!」

この変貌っぷりはなんなのよ?
取り乱すあたしに、面倒臭そうな瞳で睨む。

「馬鹿?岡崎尚ってさっき名乗ったけど」

「名前なんてどうでもいいのよ、何その変わり身の速さ!」

混乱する。
目の前の男は、やっぱり初対面の時の失礼な男。
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