大人的恋愛事情
 
淡く白い照明がカウンターの薄い木目に柔らかく当たる。



しながきと書かれたメニューには、思ったより安い値段の普通の居酒屋にあるような料理が並んでいた。



「ふーん、いいね」



なんとなく気にいったのでそう言うと、藤井祥悟が笑いながら頷く。



「気にいってもらえてよかったよ」



「よく来るの?」



「いや、滅多に来ない」



「そうなの? 勿体ない」



こんないい店なら、何度来てもいいように思う。



「一人で来てもな」



少し自嘲気味な言葉にふと隣を見ると、やけにいい男が長いマフラーを外している。
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