大人的恋愛事情
 
長いマフラーの先が揺れるのを見ながら、胸がキュッとなったりする私は意外と単純だったりする。



「入る?」



「ああ……」



「奢るよ」



「それはいい」



「どうして? 昨日も一昨日も食事代出してもらって……」



「繭と飯食えるなら、二千円くらい安いからな」



微かに笑ってそんなことを言ってくれる男に、いよいよ深みにハマろうとしているのに警報は鳴りもしない。



それをいいことに、緊張が解れ少し浮かれ気分だったりする私は、コートのポケットに手を入れている男の腕に自分の腕を絡ませる。
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