大人的恋愛事情
罪悪
 
そんな気分を抱えたまま、家に帰るとそこには、今や詩織と美貴ちゃんがやけに押してくる男が、マンションのドア前に寄りかかるように座っていた。



ルーズなコートに埋めるように身体を丸め、ドア前に座り込む。



柔らかい少し茶色い髪は無造作にハネ、コートでスーツ姿が隠れている今は、間違っても一流企業のサラリーマンには見えない。



「お帰り」



私の足音に顔を上げる圭は、どこまでも軽く声を掛けてくる。



穏やかな優しい雰囲気を出し、足を止めた私を見上げる顔は微かに笑っていて。



「仕事は? 早くない?」



定時で帰ってきた私の時間は、男性社員からすると少し早いはず。



藤井祥悟もきっと今頃はまだ、会社で仕事をしているというのに。
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