大人的恋愛事情
それなら、いくら一度は私を捨てたとしても、こうして戻って来た圭の方が……。
それさえ許せば、間違いなく待っているだろう結婚生活。
そもそも私だって、藤井祥悟とのことがあるんだし。
トラウマを差し引くとすると、ある意味圭だけが他の人間と関係を持ったわけでもなくなり。
そう考えると、どうしても許せないわけでもなく思えてきて。
お互い様だったりすると、もう今さら圭だけを責める気にもならない。
明確な最短距離か曖昧な最長距離か……。
「どうして今頃……」
思わず溜息混じりにそう言うと、向かいに座る圭が持っていたパンを皿に置いた。
「繭」