大人的恋愛事情
 
「どう思う?」



直属の上司である企画部長がデスク脇に立ち聞いてくるので、差し出された資料を見て思った事を口にする。



「弱いですね」



「弱い、か……」



「はい」



「どの辺が?」



「これでは市場のニーズが伝わりません。どれほど意味のある新薬だとしても、上層部はニーズがないと開発にGOは出しませんよ」



デスク横に立つ部長を見上げ、資料を差し返す。



「さすがホープだな」



軽く言って笑いながら、俺の肩を軽く叩き立ち去ろうとする部長を呼び止める。



「部長、資料忘れて……」



資料を手に持ったまま振り返ると、まだ40手前という年齢でありながら企画部の部長にまで上り詰めた、出来る男が笑って呟いた。
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