大人的恋愛事情
 
もう一度資料を見ながら、どこまでもインパクトの弱い資料にため息が出た。



これをインパクトの強い資料に変えろと?



しかも今日中に?



うんざりした気分でそう思っていると、部長が何かを思い出したように振り返った。



「ああ、そういえば今日の新年会……」



どうすれば頭の固いお偉方を納得させられるのかと考えながら、無意識に顔を上げると、無駄に俺に仕事を押し付けてくる上司が軽く笑った。



「総務と一緒にすることになったから、送れないようにしろよ?」



その言葉に反応する俺は思わず壁にかかる、アナログ時計を見た。



現在時刻は昼の3時20分……。



遅れないようになんて随分軽く言ってくれる。



他にも仕事が残っているのに、夜7時からの新年会に間に合うわけない。
< 535 / 630 >

この作品をシェア

pagetop