大人的恋愛事情
「迷惑してんのよ」
「そうなのか?」
「そうよ、どうして私が婚活中になってるのか……」
「いいんじゃねえの? そろそろそんな歳だろ」
軽く言われて、古いはずの胸の傷が微かに疼く気がして慌てて小さく呼吸する。
なに?
もう終わったことなのに……。
あれから一年も経ってるし。
「歳の話はしないでくれる? 社内メールだけでうんざりよ」
投げやりにそう言う私に、圭がまた笑う。
穏やかで柔らかい笑い。
それでもその優しそうな瞳の奥には、冷たい光りが灯っているのを私は知っている。