crocus

その携帯に表示された文章は琢磨を、もう一度あの日に連れて行った。若葉が創ったもしもの世界だけれど。

『花言葉って、木にもあるんです。もみじの木の花言葉は、「思い出を忘れない」です。もし健太さんが─』

…もし、健太がそれを知っていたら?

点と点が線になる、健太の本当の想いに触れる予感がして不安と少しの期待で胸がざわざわする。

『初めて話した思い出のもみじの木に、夏休み最後の日にわざわざマキオくんを置いた理由は、「始めから終わりまで思い出を忘れないよ」っていうメッセージに思えます。健太さんは決して琢磨くんを嫌ってなんかないと思います』

真実は違うかもしれない、でももし本当にそうだとしたら…健太の行動の意味が見えてくる。

川で待ち伏せ、マキオを奪って、小学校のもみじの木のそばに置く。
ダミーのカブトムシを捕まえて、今度は公園に向かい俺が現れるのを待った。

…それは俺のマキオを守るために?

激しい運動苦手なくせに、虫が恐くて触れないくせに、悪役なんか柄じゃねぇのに

…バカじゃねぇの

守られていたことに今さら気づく俺はもっとバカだけど。

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