crocus


そしてついに哲平とは離れ離れになった。哲平の母親が設備のいい病院へ転院することになったのだ。

あの日以来、まとも口をきいていなかったけれど、別れの日に哲平が最後に残した言葉は大人になった今でも時々顔を出しては、答えを探させる。

「高校行ってもサッカー続けてよ。……ボクはいつだって恭平を守るよ」

罪滅ぼしのための自己犠牲の言葉なのか、責任を取るという意味なのかと最初は思ったけれど、その言葉には似つかわしくない、清々しい哲平の笑顔が今でも引っかかっている。

そして人間不信全盛期の高2の春に、サッカーの練習帰りに何気なしに立ち寄ったのが『珈琲の木』だった。



< 188 / 499 >

この作品をシェア

pagetop