crocus

策士はイチゴ農園の嫁


翌日の早朝、キッチンダイニングでは、シンと冷えた朝一番の新鮮な空気の中に、一定のリズムが響き渡る。若葉は、まだ少し覚醒しきれていないまま、味噌汁に入れるネギを刻んでいた。

「ふぁ…ぁふぅ~」

今ので何度目のあくびだったろう。首をフルフルと振って、切ったネギを味噌汁の中へサッと投入した。

こんなに今すぐベッドにダイブして枕を抱きしめて眠りたい衝動に駆られるのは、理由があった。

昨日は誠吾くんの部屋で話をしていたけれど、誠吾くんはベッドにうつ伏せになったまま会話をしていたので、しばしの間まどろむことが数回あった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

次にうとうとしたら、そっと退出しようと思っていたのだけど、いきなり扉のドアノブが激しく壁に衝突する音が耳を打った。

素早く背筋を伸ばす力は、勢い余って少し体が跳ねた。驚きのあまりに顔を少し強張らせながら振り返ると、そこには瞳を伏せたまま肩を震わせる桐谷さんがいた。

なんとなく胸の内に蠢いている感情を必死で抑えているように見える。一言も声がかけられないのは、桐谷さんの威圧感が黒いオーラとして滲み出ているからだ。


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