crocus

そんなお祖父様は、電話口で誰かと談笑している。

「…例の話を進めたいのだが………ほぅ、それはタイミングがいい。それじゃあ、今からそちらに向かう。…善は急げだよ。あぁ、よろしく頼む…」

お祖父様は怪しい微笑を浮かべたまま、受話器を置いた。今から何を言われるのか想像すら出来ずに、ただただ戦慄いた。

お祖父様はずっと落ち着いた声で、驚くほど優しく言った。

「若葉。今から急いで仕度しなさい。ある場所まで一緒に行ってもらうよ」

「どこに……ですか?」

「お前は気にしなくていい、すぐに済む。愛想よく笑っていればいい」

拒む権利はない。
お祖父様の采配1つで、クロッカスの運命は決まるのだ。
そして、守れるのは、自分だけだ。

クロッカスを必要としている店員のみんなや、商店街の人達を思えばなんて事はない。


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