crocus

父さんにどういうことなのか尋ねてみた。けれど心の中では先生の気持ちの答えが、父さんの口から聞けるないと分かっていた。

何故なら父さんは…

「んー…なんだったんだろうなぁ。担任の先生だって言うから扉を開けたら、さっきのアレだもんなぁ…。面識なかったはずなんだけど…父さんモテキキターー!ってやつかなぁ?まいったなぁ♪ははははっ」

とにかく単純で豪快な人だからだ。こんな風に嘘をつくことが苦手で、考えがだだ漏れの人だから、信頼を寄せられていて、会社の後輩の人たちがよく飲みに来たりしている。

父さんの言葉で、一方的に先生が父さんに想いを寄せていたことが分かる。そしてきっと、あの辛そうな表情からして、僕の父さんだということも知っていたんだろう。覚悟の上だったんだ。

そう仮定するならば、僕はとんだ茶番に付き合わされた道化師じゃないか。自分の父さんに食べさせるためとは知らず、僕は先生に、父さんが食べ慣れている料理を教えていたことになるじゃないか。

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