crocus

自分に自信がないのは、僕らの世代なら大半の人がそうだろう。経験が少ないくせに、不用意な発言をするといずれ自分に返ってくる。自分の理想像と現実の差に落ち込むことの繰り返しだ。

でも、恵介がその中で見つけたのは、雪村さんのような女の子もいるという事実。女の人、みんながみんな手のひらを返して見捨てる訳じゃないということ。

それは恵介の中での常識が覆る天変地異のような大きな拾得だった。それが分かったからこそ、物の見方も変わる。

母さんも先生も、強そうにみえて実は脆い弱さも抱えていたんじゃないかと、相手の女性の立場に立てる余裕が出てきた。

考えを広げるも不用意に答えず、雪村さんのマイナス思考を断ち切る意味も含め、恵介は話題を変えた。

「ねぇ…母さんから預かったプレゼントってどこにあるの?」

「えっ…?あ、えと…ここに…」

「え、ここ!?」

雪村さんはそう言うと、スルスルと衣擦れの音をさせる。闇に慣れてきた目は、雪村さんの白い肌と着物の赤をぼんやりと捉える。


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