crocus

嘘の裏側



        ***

鮫島さんともう1人のふっくらした男の後を追いかけ、一緒にエレベーターに乗り込んだ。

「お疲れ様です」

「 あぁ、お疲れ。社長に御用時かな?」

「えぇ、まぁ 」

気づかれないように俯いたまま挨拶をすれば、当時からすれば少し感情が篭っていない声で返事を返された。

声どころか、漂う雰囲気もあの頃とはだいぶ印象が違い、人を寄せ付けない荒んだ空気を纏っている。

エレベーターは最上階の30階まで止まらずに上昇した。到着音が、沈黙の室内に大きく響いた。

先に鮫島さんともう1人の男が降りるのを見届け、要もゆっくりと歩みを進めた。

すでに歩き出していた鮫島さんは、隣の男に耳打ちをした。その男はこちらを振り向き、近づいてくる。

さすがにバレただろうか。生唾をグッと飲み込んで身構えると、その男は要の横を通り過ぎて行った。驚きつつも、振り返り確認すればまたエレベーターのボタンを押している。

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