crocus
きっと母さんも同じことを言いたかったのだと思う。やっと、そこに当てはめる言葉を見つけられた。
"今すぐじゃなくても、きっと慎一郎さんが懐の大きい優しい人だって分かるはず。だから…"
『たくさんお話してね』
父さんの嘘も、花言葉の真実も、父さんの言葉を直接この耳で聞くことが出来る。
「鮫島さん、僕は信じます。この子の言葉を」
「…勝手すればいい。要くんの口から、またそんな言葉を聞くなんてビックリだ」
自分だって自然と出た言葉に驚いている。雪村さんが、クロッカスの仲間達が危険を顧みずに駆けつけてくれたこと。俺がそれを見た瞬間、どんなに安心したか、どれだけ心強かったか。
胸を張って誇れる仲間がいる。それに復讐のために費やした、一見無駄に思える努力を、大きな信頼に値するモノと、新しい意味を与えてくれた…若葉がいる。
誰かに必要とされたかった。でもその存在を得たところで、今度は傷つけることが怖かった。
だけど、気づけばクロッカスの仲間を必要としていた。クロッカスの守られていたんだ。
そして、まさか早く父さんに会って話をしたいなんて思う日が来るとは思ってもみなかった。それからフランスに就職した姉さんにも連絡しなければ。