crocus

それから翌日には、またクロッカスのメンバーが全員揃い、通常通りの営業をしていた。

橘さんが腕に血管を浮ばせながらフライパンを振るい、その横で盗み食い、いや味見をするオーナーさん。

誠吾くんが真剣な面持ちでホイップクリームを操る傍で、いちごをほお張るオーナーさん。

雑誌を読みながら抹茶オレを啜るオーナーさんの向こうで、恭平さんは精密なロボットのように寸分の狂いもない動作で、コーヒーを作る。

泣きじゃくり涙を流す赤ちゃんをすぐに笑顔にさせる琢磨くんの温かさを見ながら、その子のお母さんを口説くオーナーさん。

周りの状況を見ながら空調、照明、音楽など細やかな心配りをするのは桐谷さんで、それによってすぐに癒されウトウトするオーナーさん。

「オーナー、邪魔!」

何人分かの声がまとまって、ウトウトしていたオーナーさんの額を押した。睡眠を妨害され不機嫌になったオーナーさんは悪びれた様子もなく反撃した。

「あら、私が手伝ってもいいの?破損報告書を1日で全欄埋めた私が」

「いや、いい。じっとしてろ。そして誇らしくすんな」

眉間に皺を寄せた恭平さんが手の平をかざしながら一蹴した。

すると店内はクロッカスの仲の良さを見ていたお客さんの笑い声で包まれる。

当たり前に思っていたそんな光景を取り戻せたことが一際嬉しくて、その気持ちを忘れたくなくて、夜のバンド演奏が始まる前に若葉は1つの提案をした。

「あの…みんなで写真を撮りませんか?」

「写真?あぁ…そういや、若葉ちゃんが来てからの集合写真はまだだったよな?」

琢磨くんが同意を求めると、隣にいた誠吾くんがコクコクと頷いた。

「いいんじゃない?若葉ちゃん、リビングの棚の引き出しにカメラが入ってるから取ってきてくれる?」

「はい!分かりました」

快く了承してくれたオーナーさんに返事をして、急いでリビングまで走った。





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